<金口木舌>昔と今をつないだ人間国宝


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 「首里の織物」の祝嶺(しゅくみね)恭子(きょうこ)さん、「琉球古典音楽」の大(おお)湾清之(わんきよゆき)さんが人間国宝に認定されることになった。2人とも卓越した技量だけでなく、研究成果も高く評価された

▼祝嶺さんは沖縄戦で失われた染織品を調べるため、琉球王朝時代の品々が残るドイツへ渡った。1点ずつというより、糸の1本1本から先人の知恵と工夫を読み取った。習得した知識と培った技術で王朝時代の逸品を現代に再現した
▼大湾さんは、楽譜なしで口伝される歌が人によって微妙に異なることに着目した。三線の音階が記された工工四と記号に残されない歌。比較研究することで歌の「型」を突き止め、その理論を基に伝承が途絶えていた曲を復活させた
▼自らの興味関心を突き詰め、調査研究へとつなげ、高度な芸術へと昇華させた祝嶺さんと大湾さん。芸術家であると同時に、学者としての側面も際立つ
▼地上戦で人も物も失われた沖縄で伝統文化を受け継ぐことは容易ではない。地道な研究で昔と今をつなぎ合わせた2人の力で、沖縄の文化が未来へ引き継がれていく。