<金口木舌>「新しい戦前」なのか


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 戦果ばかりを誇張して不利な情報は隠蔽する。「大本営発表」という言葉は、転じて信用できない情報の代名詞として使われるようになった。そんな戦前の国の体質に回帰していないかと危惧する

▼中国軍のハッカーが2020年秋に日本の防衛ネットワークに侵入していたという。米紙が報じた。浜田靖一防衛相は「サイバー攻撃により防衛省が保有する秘密情報が漏えいしたとの事実は確認しておりません」と言う
▼とはいえサイバー攻撃の存否も明確にしない。情報漏えいもまだ確認していないのか、または漏えい事実がなかったと確認したのか、曖昧なままだ
▼いかようにも解釈できる玉虫色の表現を駆使して問題を隠す。「由らしむべし、知らしむべからず」を地で行く官僚の回答を大臣がうのみにしては困る。16年にも陸上自衛隊へのサイバー攻撃があり、うやむやになっている
▼秘密の横行で多くの国民が煮え湯を飲まされ、戦争は繰り返さないと誓って78年。タモリさんの言う「新しい戦前」か。新旧問わず舞い戻ってはいけない時代である。