<金口木舌>見極める力を


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 「フェイクニュース」という言葉をよく聞くようになったのは2016年の米大統領選からである。SNSで拡散される誤った情報は人をおかしな方向へと導く。事実の見極めは難しい

▼「自分に理解しやすく、受け入れやすいことは聞こえるが、自分の物語と異なる物語は聞こえづらい」。ひめゆり平和祈念資料館説明員の仲田晃子さんの指摘にはっとした。私たちは都合よく情報を解釈してこなかったか
▼戦争証言や記録と向き合い、次世代へ伝えていく活動の中で感じることなのだろう。時代背景を理解し、証言を史料と突き合わせて読み、指摘し合う大切さを改めて考えている
▼このことは日頃の生活にも当てはまる。聞こえがいいストーリーや善悪の二項対立、美談仕立ての物語に酔ってはいないか。送り手のメディアも自戒すべき時である
▼米国ではうその情報が暴力を誘発し、民主主義を揺さぶる。過激な行動に走るヘイトクライムも後を絶たない。翻って日本はどうか。沖縄ヘイトがはびこる現実。今ほどモラルが問われる時代はない。