<金口木舌>島国キューバ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2014年6月にキューバで買った牛革製サンダルの鼻緒が抜けた。地元の日用品だが、案外もろかった

▼米国の軍事的圧力と経済封鎖に耐えて社会主義体制を堅持する人口1100万人余りの島国。米国との国交正常化交渉開始の報に世界が驚いたのが14年12月。昨年、国交回復し、今年3月にはオバマ米大統領がキューバを訪問した
▼その劇的変化の直前の姿を垣間見た旅だった。観光に力を入れ治安も良く、人々はフレンドリー。しかし、食料も配給制で物資は乏しい。頻繁に「葉巻を買わないか」と声を掛けられ、へきえきした。雑貨も輸入品が多く、製造業の弱さは隠せなかった
▼ただ、国交回復は米国が追い込まれた結果であることを見逃してはならない。米州機構内で孤立し、キューバを受け入れるしかなくなったのだ。市場としても魅力があった。9月には安倍首相も訪問するという
▼ジャーナリストの伊藤千尋氏は近著「キューバ 超大国を屈服させたラテンの魂」(高文研)で「日本のメディアのキューバ観は歪(ゆが)んでいる」と指摘し、ありのまま見るよう呼び掛ける。沖縄キューバ友好協会の金城艶子会長も「教育、医療で各国に貢献してきたことを中南米の民衆はよく知っている」と強調した
▼目の前の大国に敵視されながら誇りを保ってきた島国がどう変わるのか。沖縄から注目していきたい。