<金口木舌>季節の香り、季節の音


この記事を書いた人 琉球新報社

 先週末、県内各地で綱引き行事があった。沖縄本島では旧暦6月15日の「六月ウマチー」の頃、盛んになる。わらを編み、豊作や健康を祈って綱を引く。賑(にぎ)やかさと熱気では年中行事の中でも群を抜く

▼与那原大綱曳があった20日、本番を待つ綱を横たえた商店街を訪ねた。わらが発する香りが心地よい。季節の香りと呼びたくなる。綱引きがあった各地の集落も同じだろう。わらの香りが路地を包んでいたのではないか
▼綱引きが終わればエイサーがやってくる。今年の旧盆入りは9月3日。青年団によるエイサーの練習がいよいよ熱を帯びてきた。夜、車を走らせていると大太鼓の音が聞こえてくる。これは季節の音だろう
▼仲順流れ、久高万寿主(まんじゅうすー)、唐船どーいが、おなじみのエイサー曲である。エイサーの隊列を追っかけ、三線の音、大太鼓やパーランクーの響き、若者のフェーシ(はやし)を体いっぱいに浴びる。旧盆の夜を飾る音たちだ
▼うかうかしてはおれない。もうすぐ夏休みが終わる。宿題の追い込みに子どもたちが慌てだした。親の嘆き節も毎年のこと。昔から変わらぬ夏休み終盤の悲鳴とため息だ
▼それもこれも平和なればこそ。海の向こうできな臭い煙が漂い、国の首領が言い争う。時代をゆがめる臭いと声というべきか。こんなものに島々の季節を彩る沖縄の香りと音を消されてはなるまい。