<金口木舌>師の思い継ぐアスリート


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 ボクシング世界チャンピオンの比嘉大吾選手の初防衛戦が10月22日に決まった。デビューから13戦連続KO勝ち。県出身の浜田剛史さんらの持つ日本記録まであと二つと迫った。勝利はもちろん、戦いぶりにも注目

▼比嘉選手の師匠、具志堅用高さんが持つ記録で、いまだ到達されていないのが世界王座13連続防衛の日本記録だ。37年前の偉業に挑んだ山中慎介選手が敗れたことで、記録の偉大さがあらためて浮き彫りになった
▼具志堅さんは山中選手の1戦を前に、王者であり続ける苦しさを語っていた。「1試合で人生が変わる。それがボクシングの素晴らしさだ」と勝負への執念と厳しさを思い返した
▼久しぶりの記録ではレスリングで明るい話題があった。屋比久翔平選手(浦添工高-日体大-日体大大学院、ALSOK)が県勢で26年ぶりに世界選手権に出場した。これまで県勢で世界選手権に出場した選手は父の保さん(北部農林高校教諭)だけだった
▼保さんは1989年と91年の2度出場した。指導者となり、勝つことだけでなく、基本の大切さを徹底的に教え込む。屋比久選手の活躍に「指導者冥利(みょうり)に尽きる」と成長を感じた様子
▼保さんは代表最終選考会に進んだものの、五輪を2度逃した。「父の影響が一番」と挑み続ける理由を語る屋比久選手。家族の支えを胸に、父がなし得なかった五輪出場を東京に描く。