<金口木舌>地域の宝を磨く


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 「農泊」という言葉を取材で初めて聞いた。農山漁村で、日本の伝統的な生活体験や地域の人との交流を楽しむ滞在型旅行のことだそうだ。田舎暮らしを味わう旅と言えば分かりやすいか

▼過疎化が進む地域で、宿泊施設として空き家を再生する例もある。増える外国人観光客を呼び込み、新たなビジネスを生み出す取り組みとして注目されている。農山漁村の所得増を目指し、国も積極的だ
▼名護市で開かれたシンポジウムでは、外国人客の目的が「モノ」を買うことから、何かを体験する「コト」に移りつつあることが報告された。長野県で雪の上を歩くツアーが、東南アジアの客に人気だとの話は興味深かった
▼冬になると2メートルほども積もる雪。その上をお金を払って歩きたいという地元の人はいない。この時期の体験メニューをどうしようかと頭をひねっていた時、県外から来た人がツアーを思い付いたという
▼今帰仁村で閉校になった小学校を活用し、地産地消の体験型宿泊施設を運営している取り組みも報告された。沖縄の健康長寿を支えてきたのが食文化であり、農業や漁業であったことが指摘された
▼「また行きたくなる中身をつくることが大事。外部の目線を取り入れ、地域の宝を磨き上げてほしい」と国の担当者。沖縄にとって伝統的な食文化が「宝」の一つであることは間違いない。