<金口木舌>いかに伝えるか


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 中学の修学旅行で行った長崎の平和祈念像の手は、爆心地の位置を示していると思っていた。掲げた方は原爆の恐ろしさ、横にしたのは平和を表す、というのが正しい

▼終戦から1年後の長崎には実際の爆心地を示す矢形標柱という巨大な矢が設置された。美術家の小田原のどかさんはこの標柱を「戦後日本の野外彫刻の起点」として調査を続け、作品も制作している
▼毎日新聞が「戦後72年の表現者たち」と題した連載で小田原さんらを取り上げた。戦争をテーマに表現を続ける。小説や写真、舞台とさまざまな分野で挑戦を続ける人たちがいる
▼平和事業の一環で北谷町から長崎、広島に派遣された中高生の報告会があった。長崎に行った中学生は他県の中高生と交流。多くの住民が巻き込まれたことや強制集団死など沖縄戦の実態を知らない同年代が多いと驚きを話した
▼同時に「伝える活動がさらに必要」と貢献を誓った。北谷高生は広島で外国人と多く接し、沖縄戦が知られていないことを痛感した。伝えるには「英語を学ぶことが大切」と身をもって知った
▼継承の難しさが言われる。学ぶ機会を得た子どもたちは現状を捉え、つなぐことを率直に模索している。表現の第一線にある人たちと同じようなしなやかさと、たくましさを感じさせる。その真っすぐな瞳にいかに答えるか。私たち大人が目をそらしてはならない。