<金口木舌>笑顔のウサンデー


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 見送りはなるべく遅く、時間ぎりぎりまでゆっくり過ごす。恋する2人ではない。先祖を迎えての最後の一夜。きょうのウークイのこと

▼行事が簡略化され、送りは早い時間に行うという家庭も多い。翌日に響くといけないという考えもあるだろう。ただ、かつてはウークイの翌日も休みというところも多かった
▼沖縄では七月(しちぐゎち)は、行事の3日間と明けの1日の都合4日間休みだったとエッセイストの古波蔵保好さんが「料理沖縄物語」で書いている。正月に勝る一大イベントで、次の日はへとへとになったからだとか
▼明け休みはなくなっても、昔と変わらない3日間を務める家もまだ多い。かつては借金までして盆を迎えることもあった。過剰に思われるかもしれないが、古波蔵さんは貧しかった沖縄で、滋養を付ける知恵だったとつづる
▼ぜいたくはためらわれるが、ご先祖のためにと料理を準備する。祖霊のお相伴でごちそうを食べ、力を蓄える。「ごちそうを食べさせるために、ご先祖がいらっしゃる」
▼子や孫に加え、今ではその友人、同僚らに参加してもらってのウークイもあるとか。お重から誂(あつら)えのオードブル、フライドチキンと様変わり。変わらないのは卓を囲んで顔を見合わせること。「笑顔を見させるために、ご先祖がいらっしゃる」というところか。笑顔のウサンデー(お下げ)を明日からの力にしよう。