<金口木舌>30文字の決意


この記事を書いた人 琉球新報社

 本紙の「琉歌や肝ぐすり」に連日投稿が舞い込む。高齢者を中心に琉歌は根強い人気を保っている。若い世代も挑んでほしいとひそかに願う

▼八八八六の三十文字に投稿者は喜びや悲哀、願いを込める。亡き人への追慕をつづった作品は胸に迫ってくる。戦争を悲しみ、平和を願う作品も多い。厳しく辺野古新基地反対を掲げる歌もある
▼恩納村で琉歌を指導する大城和子さんは今年6月、「礎前に流す御真人の涙ゆ 又とよも戦しちやならぬ」という作品を送ってくれた。平和の礎で涙する県民の悲痛を見詰め、反戦を誓う歌は心を震わせる
▼東京で教鞭を執った県出身芸能研究家の島袋盛敏さんの大著「琉歌大観」に「穴住居しちやるいくさ世もすぎて明けてあがりてだ拝むうれしさや」という歌がある。激戦がやみ、壕を出て朝日を拝む喜びを歌った源河朝達さんの作品だ
▼「地獄の苦しみを味わった沖縄の人達が、平和になった時の喜びは、どんなものであったか、想像もできないものがある」と島袋さんは記す。「明けてあがりてだ拝むうれしさや」というしまくとぅばが胸に染みたのであろうか
▼沖縄防衛局の職員が辺野古で発した「日本語分かりますか」にため息が出る。しかし、嘆き悲しむ前に、琉歌が刻む平和の誓いを心の奥底でかみしめよう。三十文字に込めた沖縄の心は簡単には揺らぐまい。