<金口木舌>温かいやりとり


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 インターネットの世界で、気になる言葉の使い方がある。例えば本来、物質や商品に対して使われる「劣化」という単語が、人間に対して使用されているのを時折、目にする

▼「ある女優の顔が劣化している」という表現があるかと思えば、「劣化芸能人ランキング」という記事さえある。そこには相手の尊厳への配慮が全く感じられず、嫌な気持ちになる
▼人のことを指して「使える」「使えない」と表現するのも、残念ながら“定着”している。相手の立場になって考えるという、当たり前のことがないがしろにされている
▼仕事上、メールでのやりとりが多い。会ったことのない人が相手だと、失礼にならないようにと、表現にとりわけ気を遣う。かといって、丁寧にしすぎて意図が伝わらないのも困る。あれこれ思案し、時間も労力もかかるのは確かだ
▼各地の小学校で、人を傷つける「ちくちく言葉」ではなく「ありがとう」などの明るく前向きな「ふわふわ言葉」を使おうと取り組まれている。「ふわふわ言葉」を掛けられてうれしいのは、大人も子どもも同じだ
▼通信ツールの発達で、簡単にコミュニケーションが取れるようになった。ただ、思いやりの部分は省力化できないし、してはいけない。送信する前に、相手の顔をもう一度思い浮かべるだけでも、温かいやりとりにつながるのではないか。