<金口木舌>「北風と太陽」と北朝鮮


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 イソップ物語の「北風と太陽」は、コートを着た旅人をどちらが先に脱がせるかを競う。強風を吹かせる北風に対し、太陽は暖かい日差しを送り、旅人は暑さからコートを脱ぐ。勝利したのは太陽だった

▼旅人を北朝鮮に例えた場合、北風が米国や韓国、太陽はロシアや中国と言えよう。米国は国連安保理決議案に石油の禁輸を提案し、米韓合同軍事演習を実施するなど“強風”の圧力を送る。ロシアのプーチン大統領は「外交、政治的な方法でのみ解決可能だ」として対話重視の姿勢を見せ、表面上“太陽”のように振る舞う
▼日本は米国の陰から、大きなうちわで風を送るといった役どころか。やっかいなのが旅人が凶器を持っている点だ。凶器を捨ててほしいが、そのやいばは日米韓に向けられている
▼1962年10月、米国とソ連の冷戦中に起こった「キューバ危機」。ソ連はキューバに配備した核兵器を撤去し、米国はトルコ内の米国のミサイルを数カ月以内に撤去するという取引で危機は回避された。この合意は20年以上秘密にされた
▼同様の交渉が、水面下で展開されているのだろうか。イソップ物語のような単純な勝ち負けでは済まない
▼そもそも北風と太陽は「自分の方が強い」と言い張り、力比べで決着を付けることになった。国同士の力比べほど愚かな争いはない。県民は誰よりもそのことを知っている。