<金口木舌>独身女性の貧困問題


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 「負け犬の遠吠え」という本がベストセラーになったのは今から14年前。「未婚、子なし、30代以上の女性」を負け犬と定義したのは著者の酒井順子さんだった

▼自虐的に「負け犬」と言いつつも、独身者はしがらみが少なく、時間的にも経済的にも自由で、前向きにその生き方を捉えていた。どちらかといえば酒井さんのように、経済的に自立している人の視点だった
▼国立社会保障・人口問題研究所の調べでは、20~65歳(勤労世代)の独身女性の相対的貧困率は32%に上るという。子どもの貧困の陰で、独身女性の貧困問題はあまり表に出て来ない
▼貧困の要因は女性の大学進学率が男性に比べ低いこと、40代前半以下の世代は就職氷河期と重なり、就職難だったこと、非正規雇用に女性が多いことなどが考えられる。根底にあるのは「女性はいずれ結婚するだろう」という前提だ
▼税金や社会保障制度は、将来女性は夫の扶養下に入ることを前提にしている。女性の生涯未婚率は年々上昇し2015年は14・06%と過去最高を更新。旧型のモデルは見直し、多様な選択肢を示す時期に来ている
▼「負け犬」「勝ち犬」、「子なし」「子有り」、「正社員」「非正社員」など女性を二分しては問題の本質を見失う。既婚・未婚を問わず、生きづらさを感じる女性の「つらさ」を解消せずして女性の活躍推進は進まない。