<金口木舌>鎮魂の祈りは続く


この記事を書いた人 琉球新報社

 4人の少年によって荒らされた読谷村波平のチビチリガマを訪ねた。遺品や千羽鶴が元のように整えられ、ガマの前には真新しい花束が手向けられていた

▼悲劇の地は少し落ち着きを取り戻したように見える。少年の逮捕を受け、遺族会は週明け、ガマに集まったと聞く。ガマが荒らされた衝撃は拭えない。それでも犠牲者の魂を鎮め、平和を求める遺族の祈りは続く
▼1987年11月、ガマの入り口にある彫刻家金城実さんの作品「世代を結ぶ平和の像」が右翼団体の若い構成員によって破壊された。チビチリガマの惨事で肉親を失った遺族の悲しみは深かった
▼それから30年を経て、不幸な出来事が繰り返された。沖縄戦を含め「三度殺された」という遺族の憤りと嘆きに胸が締め付けられる。しかし、そこから目を背けてはならない
▼少年を非難する声がある。生い立ちや環境を見詰める人がいる。平和教育の欠落を指摘する人もいる。それらに耳を傾けながら自問する。私たちはチビチリガマを含む沖縄戦犠牲者の魂が鎮まる社会を築いていないのではないか
▼少年たちには深い反省と立ち直りを求めたい。そして私たちは金城さんが作った「チビチリガマの歌」の一節、「ミルクユニガティ ムヌシラシドゥクル チビチリガマ」を心に刻みたい。「平和な世を願い、物を知らす所、チビチリガマ」という意だ。