<金口木舌>核はいらない


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県民はよく生き残れたと、身の毛がよだつ思いがした。沖縄戦のみならず戦後“も”の話だ。10日放送のNHKスペシャル「沖縄と核」を見て、そんな感想を抱いた県民は多いだろう

▼米軍那覇飛行場での核ミサイル誤発射、核投下を想定した訓練…。番組は、沖縄が東西冷戦の緊張下で核戦争の最前線として危機的状況だったことを明らかにした。北朝鮮が核ミサイル発射実験を繰り返す中、大きな反響を呼んでいる
▼放送の4日前。石破茂自民党元幹事長は、北朝鮮情勢を踏まえ、日本国内への米軍核兵器配備の是非を議論すべきと主張した。自民党内には、それに理解を示す声がある
▼1960年代後半、沖縄返還を巡る日米協議で、沖縄への核再持ち込み密約が結ばれた。米側はその際、辺野古や嘉手納などの核貯蔵地を有事の際に活用することを求め、日本側は了承した
▼北朝鮮情勢への対応で今後、在日米軍基地への核配備論が強まる可能性がある。密約で配備対象にされた辺野古と嘉手納が、また秘密裏に候補にされないか心配だ。核と一体化の恐れがある辺野古新基地はおろか、嘉手納でも核を背負わされるのは絶対に許せない
▼核開発まっしぐらの北朝鮮の姿は、そもそも米国の核は抑止力があるのか、疑問を抱かせる。国内米軍への核配備はむしろ危機を高める。本土も沖縄も「核抜き」の原点に立ち返る時である。