<金口木舌>「新星」世界の舞台へ


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 遅咲きの「新星」といえるだろう。高校、大学とも全国的には無名に近かった体操男子の安里圭亮選手(24)=北中城村出身=が、10月2日から始まる世界選手権に初めて臨む。県関係では、松永政行さん(興南高出)以来22年ぶりの快挙だ

▼大きな挫折が飛躍への始まりでもあった。興南高から進学した福岡大で、1年生の時に右肩を骨折した。1年間は器具に触れられず、技に磨きを掛ける仲間を横目に、回復への不安と戦ったという
▼焦る気持ちを抑え、下半身の強化に取り組んだ。体幹を徹底的に鍛え直した。本格復帰まで2年を費やしたが、それまでにない踏み切りの力強さと跳躍力が生まれ、跳馬を得意種目とする基盤をつくった
▼大学4年の全日本学生選手権種目別跳馬で2位に入り完全復活。社会人2年目の6月の全日本種目別では予選で15・025点をマークした。世界選手権選考の国内各大会を見回してもこれを上回る得点はない
▼三重県の相好体操クラブで、自らの練習と子どもへの指導に明け暮れる。苦労人だからこそ体操の楽しさも人一倍実感。技一つを習得する達成感を感じてもらおうと、後進の成長を願い指導法にも腐心する
▼世界で数人しか跳べない最高難度「リ・セグァン」を国内でただ一人跳べる選手となった。跳馬のスペシャリストの世界舞台に、教え子たちの夢も託されている。