<金口木舌>72年前の爆弾


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 車の通行が止まった。長野県から訪れた観光客が目を丸くした。「何度も沖縄に通っているけれど、こんなの初めて。しかも日常茶飯事だと聞いたんです。考えられない」

▼市役所職員は汗だくで避難区域と迂回路の説明に精を出す。手にした地図に英語、韓国語、中国語が記されているのは、この通りゆえか。キャリーバッグを引きずり、右往左往する外国人観光客もいる。気の毒だ
▼23日、国際通りに近い工事現場であった不発弾の処理作業で見聞きしたことだ。半径160メートルの避難区域には千世帯2500人が暮らし、ホテルやコンビニなど350事業所がひしめく。商売上の痛手も大きいだろう
▼通行止めを知らせる立て看板のそばで、目の不自由な男性が、折り畳んだ白杖(はくじょう)を握り座り込んでいた。作業が終わるのをじっと待っている。とんだ災難だ。戦争の時も、常に弱者が犠牲になる
▼米軍が落とした爆弾は県民を傷付けてきた。殺傷力を維持したまま地中に埋もれた不発弾がいつ爆発するか分からない。処理に当たる自衛隊員は真新しい下着で作業に臨むという。自衛隊員から聞いた話だ
▼海の向こうでミサイルだ原爆だ完全破壊だと果てしない応酬が続いている。それに乗じてか、日本の政権党は憲法改正を掲げて総選挙に挑む。こちらは72年前に落とされた50キロ爆弾に苦しんでいるのに。ため息が出る。