<金口木舌>政治不信の「しくじり」


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 活動が完全にできなくなっていた彼は10年ぶりにテレビ出演し、こう語った。「勝ちにこだわり続けて負けたら全て終わると思った」。数々の不祥事を起こした理由だ

▼息子3人をプロボクシング世界王者に育てたものの、ルールを破るなど業界から11回処分を受けた亀田史郎氏。24日のバラエティー番組「しくじり先生」で当時の心境を告白した。道理より「勝ち」を優先したために「国民から嫌われた」
▼似た動機に映る。きょうの衆院解散だ。安倍晋三首相は消費増税による教育・社会保障の充実を訴える。北朝鮮情勢が緊迫している、このタイミングで国民の審判が必要な大義なのか。ふに落ちない
▼野党民進党は「森友・加計問題隠し」と批判する。その民進党も、不倫疑惑報道や離党騒ぎで混乱状態。解散は、その混乱に付け込み、道理より「勝ち」を重視した感が否めない
▼説明逃避、不祥事、疑惑、混乱…。永田町の晴れない空気が、衆院解散で全国を覆う。最も心配なのは国民の政治不信である。既に過去最低レベルの投票率を予想する見方もある
▼昨年の米大統領選は「嫌われ者同士の戦い」と言われ、低投票率だった。選ばれたトランプ氏の言動は今、米社会の分断を深めている。教訓にしたい。人と政策を見極め、まずは投票に行こう。政治に道理が通らないと最も「しくじる」のは国民なのだから。