<金口木舌>安保重視ならリスクの責任も


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 その言葉に会場は一瞬、緊張感に包まれた。「沖縄は拉致されている」。9月30日、沖縄の基地を引き取る会・東京が都内で開いた集会で、辺野古新基地に反対する岸本セツ子さん(78)はこう語った

▼岸本さんはビラを手に、米軍専用施設の7割が集中する沖縄は「日米地位協定により国内法が適用されない」と話した。治外法権状態を、米軍による“拉致”に例えたのだ
▼「首相がそれを許している」。ビラでは米軍専用施設「◎山口県3・0%」と「◎」を付けて安倍晋三首相の地元との差を強調する。「これが、平等ですか?」と
▼集会では、米軍属女性暴行殺人事件に抗議する県民大会でオール沖縄会議共同代表の玉城愛さんが述べた発言が紹介された。「事件の第二の加害者はあなたたちだ」。首相と本土の国民に発した言葉を聞き、涙ぐむ女性が何人もいた
▼岸本さんと共に登壇した知念栄子さん(73)は、日本復帰から45年たっても重圧に苦しむ沖縄にとって日本は「祖国とは言えない」と声を震わせた。「安保が必要と言うのなら、(基地を)平等に引き受けてほしい」
▼小池百合子希望の党代表は、民進党出身者の合流を巡り、自身の政治理念の「根幹」である安保法制を踏み絵にしている。ならば、安保から生じる沖縄の負担やリスクへの責任を負い、引き受けるべきだ。沖縄の有権者はそこを見ている。