<金口木舌>仕事持ち帰らないで


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 NHK連続テレビ小説「ひよっこ」が先週、最終回を迎えた。主人公のみね子は、何か大きなことを成し遂げるわけではないが、家族や周りの人々の優しさを感じながら成長していく

▼“ひよっこロス”の中で、ある場面を思い出した。茨城から上京し、紆余(うよ)曲折を経て洋食屋に雇われたみね子。ウエートレスの仕事は、覚えることがたくさんある。意欲満々に、メニューを持ち帰って内容を覚えたいと言う
▼しかし、店主はその申し出をきっぱりと制する。「私は、勤務時間の分しか給料を払っていない。家に帰ったら仕事のことは忘れろ」。「みね子、頑張るな」などとのんきに思いながらテレビを見ていたので、はっとした
▼店主の言う通り、業務時間以外は個人の時間で、自由に使えばいい。また心身ともにリフレッシュすることが、結果的にいい仕事にもつながる。当たり前のことだが、それが新鮮に聞こえてしまう現状がある
▼電通違法残業事件を機に「働き方改革」の議論が加速している。だが長年、長時間労働やサービス残業を前提に運営してきた多くの企業で、なかなか体質改善が進まない
▼死を招くほど働かなければならない社会は、不幸だ。「改革」が一筋縄ではいかないことも承知しているが、命の尊さには代えられない。社会全体が考えることを怠けず、一歩ずつでも歩を進める時だ。