<金口木舌>戦争の愚かさ

 1945年の沖縄戦で大田実旧海軍少将が6月13日に最期を遂げた翌日、鈴木貫太郎首相は「沖縄は天王山に非ず」「本土決戦は絶対有利」と豪語した。その影響か、本土紙は組織的戦闘の終結を「戦いはこれからだ/一億沖縄官民に続け」と伝えた

▼大田氏のことは「上海戦以来陸戦隊の猛将」と賛美した。彼の五女寺島勝子さん(85)=千葉県在住=にお会いし、当時の報道には見えない大田像に触れることができた
▼大田氏は32年の上海事変の戦勝を祝うちょうちん行列を見て「祝う気になれない」と、自宅で酒を飲んでいたという。事変で失った部下を悼んでいた
▼沖縄に赴く際には、京都で竹やりを大量に購入したという。米国の物量作戦を知っていたが、日本軍の兵器不足を補うためだ。沖縄住民も日本兵も、本土決戦に向けた時間稼ぎの「捨て石」だった
▼最期には「沖縄県民斯(か)く戦えり。県民に対し、後世特別のご高配を賜らんことを」と電報を打った。その思いをよそに死後も「猛将」と呼ばれ、戦意高揚に利用された。当時の新聞は「一流の負けじ魂/血を以て“時”稼ぐ」と沖縄での戦闘をたたえた
▼部下や県民を思いながらも強大な敵に竹やりを買って挑んだ大田氏の生き様は、沖縄戦がいかに愚かな戦闘だったかを物語る。北朝鮮問題など、きな臭い昨今、戦争の愚かさを知ることが今ほど大切な時はない。