<金口木舌>努力で花開いた最多勝


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 シーズン前の2月、本紙の取材に「他より勝るものがないと活躍できない」と豊富な練習量を挙げた。プロ野球ソフトバンクの東浜巨投手だ。16勝のパ・リーグ最多勝は、努力の虫がキャンプで体をいじめ抜きつかんだと言えよう

▼勝ち星だけではない。勝率はリーグ2位、防御率は4位。投手3部門でトップ争いを演じた。ステップの年と位置付けた今季は、チームのリーグ優勝の原動力として躍動した
▼2013年のプロ入り後は伸び悩んだ。初先発は4回途中までに6失点、満塁本塁打も浴びた。すぐに2軍降格となり、しばらくは走り込みなど下半身と体幹強化に没頭した
▼日本ハムの大谷翔平投手や阪神の藤浪晋太郎投手ら同期の新人が活躍していただけに、悔しさは大きかったはずだ。即戦力としての期待に応えられないプレッシャーは、ドラフト1位右腕に重くのしかかっただろう
▼勝利数は3、2、1と毎年下降した。だが2年目にウエスタン・リーグで最多勝を獲得。オフシーズンは渡米し、筋力トレーニングを続けた。地道な努力は昨年の9勝につながり、今季の飛躍となった
▼1990年にパ・リーグ打点王に輝いた石嶺和彦さんは「タイトルを取ると取らないでは意味が違う」と東浜投手をたたえる。東浜投手はクライマックスシリーズ初戦での先発が予定される。県出身初の最多勝右腕の戦いはまだ続く。