<金口木舌>マチグヮーは元気


この記事を書いた人 琉球新報社

 写真家・藤原新也さんの著書「全東洋街道」に「市場があれば国家はいらない」という一文がある。「立派な市場はそれのみで主権を持っている」とも記した。中東、アジアの市場を見聞してのことだ

▼ウチナーはどうだろう。敗戦で日本国家から切り離された焦土でマチグヮーを再興したアンマーたちがいた。嘉手苅林昌作「時代の流れ」ではないが、アメリカ世、ヤマト世の変遷を超え、マチグヮーは生きてきた
▼マチグヮーの代表格と呼んでいいだろう。那覇市樋川の農連市場が64年の歴史を終え、新施設「のうれんプラザ」に移転する。地上3階建て、市場というより中規模商業施設といった趣か
▼農連市場が活気づくのは未明から早朝にかけての時間帯。売り手と買い手がやりとりする伝統的な相対売りはにぎやかだ。最近、解体工事のおかげで店舗の移転が進み、寂しくなったようだ
▼市場移転に至るまで、さまざまな議論があったと聞く。市民、県民に支持される市場をどうつくるか、模索は続く。マチグヮーを愛し、伝統を守りたいと願ってのことだろう。市場の「主権」を発揮するとき
▼「国家」の姿を論じ合う衆院選のただ中にある。国から厳しい仕打ちを受けてきた沖縄だが、マチグヮーは元気で頑張るはずだ。これまでも時代の荒波を乗り越えた。新施設でも心が通う相対売りが続くに違いない。