<金口木舌>自分に打ち勝つ勇気の持ち主


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 1991年9月、プロ8戦目の世界挑戦でTKO勝ちした辰吉丈一郎選手。具志堅用高さんが持つ当時の世界タイトル奪取の国内最短記録(9戦目)を驚異的な強さで塗り替えた

▼その後は網膜剥離の既往症なども影響し、敗戦も繰り返しながら99年に引退した。だが2002年12月、3年4カ月ぶりに元世界王者との戦いに臨み勝利した
▼「常識を超える一戦」と称された辰吉選手の復帰戦を県関係選手を取材した大阪府立体育会館で見た。ボクサー特有の殺気漂うボクシングで、見る者の心を揺さぶった
▼ボクシングは人生の一部としたのは金城真吉さん。興南高校や沖縄尚学高校の監督として、具志堅さんら世界王者や多くの高校全国王者を育てた。那覇市内のジムなどで、14年まで約45年間、指導に徹した
▼金城さんは「人に勝つ前に自分に勝て」「練習で泣いて試合で笑え」を選手に教え込んだ。練習では厳しいがその半面、試合後の監督の笑顔が、さらなるやる気を起こさせてくれると、選手たちは口をそろえた
▼練習では妥協しない。その教えを受け継いだ具志堅さんのまな弟子比嘉大吾選手が5月、世界王座に就いた。県出身では四半世紀ぶりの正規王者だ。具志堅さんは技術力に加え、闘い抜く気持ちを勝利の条件に挙げる。KO勝ちを課し自らを鼓舞する王者。師が認める勇気の持ち主があす22日、挑戦者を迎え撃つ。