<金口木舌>町の本屋に行こう


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 「本土の人は電車で本を読むが、沖縄の人は車で移動するからあまり本を読まない」という話を聞いたことがある。だが県内出版業界の元気さを見ると、違う気がする

▼本と街を盛り上げるイベント「ブックパーリー」が盛況だ。5回目の今回は、最多の約70書店が参加した。これほど多くの参加は、全国的にも珍しい。古本市や作家のサイン会など、県内全域で25の催しが開催されている
▼金武町で開かれた「沖縄伝統空手道から学ぶケガをしない体づくり」では、参加したお年寄りの10年来の腰痛が良くなり喜ばれた。本とは無関係に見えるが、町内の書店が主催した
▼盛り上がりの理由として、実行委員の喜納えりかさんは「沖縄の人は本を読むだけでなく、本を通した人とのつながりも楽しんでいる」と話す。県内では新刊書店と古書店、出版社の垣根が低く、協力的な雰囲気もあるそうだ
▼ただ、背景には書店の減少への業界の危機感もある。催しの一つ「なつかし写真展」は、地域で愛されてきた町の本屋を紹介する。幼い女の子が赤ん坊を背負い、立ち読みする姿などが懐かしさを誘う
▼本屋は戦後、庶民の貴重な情報源で集いの場だった。喜納さんは「来場者の間に『今のままじゃいけないよね』という雰囲気が広がっている」と言う。きょうから「読書週間」。町の本屋に出向いてみてはどうだろうか。