<金口木舌>地域間をつなぐ縁


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 大リーガーのイチロー選手の安打記録樹立が近づくと、報道カメラが注目する観客席の一角があった。安打数を示す手製ボード「イチ・メーター」だ。ファンの女性が思いついた応援だった

▼プレーに期待する真っすぐな思いが伝わったのだろう。「ユニークな応援が励みになった」と当のイチロー選手が振り返った。その「メーター」がこの夏、うるま市内に掲げられた
▼「イチ」ならぬ「ナオ・メーター」。うるま市出身でプロ野球ソフトバンクの東浜巨投手の勝ち星を掲げ続けた。同期会の呼び掛けなどで四辻で見かけるあの横断幕形式。地元有志らが取り組んだ
▼入団後は伸び悩む時期もあった。地元ファンらも成績に一喜一憂してきた。最多勝の活躍はわがことにようにうれしかったはずだ。東浜投手にも与勝地域からの熱き思いが届いただろう
▼16勝で並んだ西武の菊池雄星投手との同時受賞で惜しむ向きもある。だが、うるま市は二重の喜びと捉えた。菊池投手が友好都市の岩手県盛岡市出身だからだ。提携5年の節目でもある。市は菊池投手の名も入れて祝福の横断幕を作成した
▼合縁奇縁とは言ったもの。何が人や地域をつなぐか分からない。両市の提携も盛岡舞台のNHKドラマ「どんど晴れ」にうるま市出身の比嘉愛未さんが出演したのがきっかけだ。出身選手らの活躍は市民間の細やかな交流を促進させる。