<金口木舌>名前が同じだけで


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 少し共通点があると知るだけで、相手との距離がぐんと縮まることがある。先日、東京在住の会社員、田中宏和さんの「田中宏和運動」を知り、あらためてそう思った

▼田中さんの趣味は「田中宏和探し」。1994年、自分と同姓同名の田中宏和選手がプロ野球ドラフト会議で1位指名を受けたことがうれしく、年賀状のネタにしたことが発端だそうだ
▼その後SNSを通じ、全国の田中宏和さん200人近くとつながった。職業や趣味などをもとに決めたニックネームで呼び合い、特製のロゴや歌も作った。先日、同姓同名の人が集まるギネス世界記録に挑戦した
▼記録更新はならなかったが、東京の会場に北海道や鹿児島などから87人が集まり、打ち解けた雰囲気で懇親を深めた。ちなみに世界記録は2005年、米国でマーサ・スチュワートさんが集まった164人
▼沖縄では昨年、南城市玉城の奥武島で「第6回嶺井藤八・ウシ記念オリンピック」が開かれ、嶺井さん夫妻(故人)の子孫約270人が参加した。こちらは親族同士ではあるが、4年に1度の開催を続ける絆に感心した
▼先の田中さんは3年後にまた、記録更新に挑戦することを決意しているそうだ。田中さんの愉快な取り組みが、全国に笑顔の輪を広げた。名前が同じだけでこんなにも楽しめる。人はふとしたきっかけで仲良くなれるのだ。