<金口木舌>熊本に来て、見て


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 代表作「忘れられた日本人」で名高い民俗学者の宮本常一さんの仕事に雑誌「あるく みる きく」の監修があった。1967年の創刊で、タイトルに宮本民俗学の基本姿勢が宿っている

▼その宮本さんは69年、沖縄を訪れている。「沖縄の今後はどうすればよいかを見、考えるための旅であった」と著書「私の日本地図・沖縄」に記した。「あるく みる きく」に徹したことは、この本を読めば理解できる
▼先日、地震から1年半を迎えた熊本県を回った。そこで「来てください、見てください」という言葉に幾度も接した。熊本城の修復に携わる職員や復興支援の地域ボランティアのお願いであった
▼土砂が崩れた山肌は痛々しかった。東海大学キャンパスの構内には生々しい断層が残っていた。崩落した熊本城の城壁を修復するのに20年を要する。いずれも熊本で見て、知ったことだ
▼蒲島郁夫熊本県知事は「食べて、飲んでください」と付け加えた。街を元気にするための呼び掛けだ。夜の繁華街は活気があった。にぎやかなハロウィーンの行列もあったそうだ。元気な熊本を取り戻そうと知恵を絞っている
▼足を運んで、見て、聞いて、考える。そうすることで初めて見えてくる熊本の現実がある。まだ仮設住宅で暮らす人たちもいる。「来てください、見てください」の呼び掛けに沖縄から応えたい。