<金口木舌>違っていても一緒がいい


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 「あなたはなぜ歩けないの?」。電動車いすで生活する伊是名夏子さんは幼い頃、人からよくそう聞かれるのを不思議に思い、逆に「あなたはなぜ歩けるの?」と聞いたという

▼世の中には当然、歩ける人もいるし、歩けない人もいる。しかし、車いす利用者と接する機会が少ないと、無意識のうちに歩ける人だけを基準に物事を考えてしまうのかもしれない
▼11日、伊是名さんのゆんたく会に参加した。「違いを受け止めることは大事だ。一方、価値観が同じだと安心する」という参加者の意見に、伊是名さんは「『みんな違ってみんないい』というが、違う人の存在は当たり前になっていない」と指摘した
▼「緊急時、人と違うのはいやだと思ってしまう」とも語った。東日本大震災の時、エレベーターが止まり、障がい者は独りで避難できなかった。健常者は階段やはしごを使って避難することができた
▼健常者は、頼れるものが多い。依存できる選択肢がたくさんあって、自立できている。伊是名さんは「障がい者も依存先を増やしたい。違っていても、みんなと一緒がいい」と強調した
▼誰でもできないことはあるし、手助けを必要としている。みんなが使いやすい、頼りやすいのはどんなものか。みんなで一緒に歩いていくためにどうすればいいのか。そこから考えることが、生きやすい社会につながる。