<金口木舌>ものづくりの危機


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 外国人専門家集団が口をそろえる。「これは驚いた」。お寺など世界遺産に用いた伝統技法を、日本の職人たちが外国からの視察団に披露する

▼テレビ番組「世界が驚いたニッポン」は、日本のものづくりのすごさを伝える内容がよく出てくる。日本経済の発展の基礎であり、「誇りの原点」でもある、ものづくりの技術を再発見する狙いがある
▼その日本のものづくりが今、危機に直面している。東芝の経営危機に衝撃が走った。その後わずかな間に、日産自動車、神戸製鋼所、スバル、三菱マテリアル子会社、東レと、国内製造業大手の不祥事が相次いで発覚した
▼ここ数年、かつては高品質・高性能の代名詞だった日本の製造業の信頼が揺らぐ事態が続いている。三菱自動車の燃費試験不正、タカタ製エアバッグのリコール問題などもそうだ。品質管理を軽視すると、消費者の安全が脅かされる
▼日本の製造業の国際競争力が低下している中、世界に誇ってきた「メイド・イン・ジャパン」の品質への信頼が問われている。先の番組は、そんな日本経済に、人々の自信が喪失しつつあることへの裏返しにも映る
▼不祥事の背景には組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)体質がある。個人ではなく、組織の利益のために長期間行われてきた。消費者の安全を最優先する組織に変えてこそ、信頼が回復できる。変革できるかを世界が見ている。