<金口木舌>「相談」という選択肢


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 非行少年に関わって約15年になる山田照子さんは以前、街頭補導活動で出会った女の子が数日後、自殺未遂をするという出来事にあった。彼女は悩みを抱えた末、この手段を選んだ

▼彼女にとって親は、頼れる相手ではなかった。山田さんは彼女ととことん話し合ったが「次に悩みがあった場合、自殺する」と言われた。そこで「相談すること」を選択肢とするよう助言し「私も話を聞く」と約束した
▼それから彼女は、苦しくなると連絡してくるようになった。山田さんは相談できたことを褒め、一緒に解決策を考えた。彼女は今、2児の母親になり、幸せに暮らしている(1日付教育面)
▼誰だって困難に直面し、苦しい時ほど正解がほしくなるものだ。相談すれば必ず答えが出るわけではない。だが、頭が整理され、視界が開けることもある。悩みがすぐに解消されなくても、心の負担は軽くなる
▼先の女の子は、自分なりに問題と向き合ったが「相談」という選択肢がなかったために自殺を選択した。山田さんは「私が関わった非行少年は一人で悩んできた子ばかりだった」と振り返る
▼さまざまな事情から、子を十分に支えられない親はいる。それでも、周囲の大人が子どもたちに寄り添うことはできる。子どもに生きるための選択肢を提示し、真剣に話を受け止めることが、大人に求められている。