<金口木舌>輝きを放ち始めた逸材


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 五輪を知る先輩らが次々と賛辞を送った。「地道な努力が実を結んだ」(平良朝治さん)「日本の救世主だ」(吉本久也さん)「快挙、世界レベルへの成長は感慨深い」(平良真理さん)

▼米国であった重量挙げの世界選手権で糸数陽一選手(南城市出身)が銀メダルを獲得した。県内関係者の喜びを本紙1日付が伝えた。日本男子で36年ぶりの表彰台。現地でも日本選手団が祝福の輪で包んだ
▼重量挙げは頭まで一気に持ち上げるスナッチと、バーベルをいったん胸元まで持っていき、その後に頭上へ差し上げるジャークがある。世界選手権ではそれぞれの難しさが、改めて浮き彫りになった
▼スナッチで糸数選手は5位、1位のベトナムの選手と2キロ差あった。優勝を狙うベトナムの選手は続くジャークの試技を3本とも失敗し、記録なしに終わった。糸数選手は2本成功し、勝負強さを見せつけた
▼体が沈んだ状態から持ち上げるジャークは脚力がより重視される。五輪を2度経験した吉本さんは、生まれ育った東村の浜が練習場になった。小学時代に走り幅跳びで全国大会に出場した糸数選手も、出身地の久高島の自然で脚力を磨いたかもしれない
▼中学時代、その身体能力は「ダイヤの原石」と日本協会の三宅義行会長を驚かせた。金メダルまであと1キロだった今大会。重量挙げの逸材が世界で輝きを放ち始めた。