<金口木舌>メディアスクラム


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 街頭で記者に「今回の組閣について、どう思いますか」などと取材を受けたらどうするか。「安室奈美恵さんの引退」であれば答えやすいだろうか

▼これが複数のメディアからとなると気後れする人もいるだろう。事件事故が発生した時、複数の報道機関が1人の関係者に取材が集中することがある。時々、相手への配慮を欠き「メディアスクラム」となってしまうこともある
▼普天間第二小学校の運動場に、米軍ヘリの窓が落下した。心のケアが必要な児童に、直接取材するのは厳しい。現場の状況を知る教員に直接話を聞きたいところだが、取材した記者によると難航したという。過去の「メディアスクラム」の事例からも、報道側にも反省点はあるだろう
▼それでも話をしてくれた児童や保護者がいた。「運動場から悲鳴が聞こえ、怖かった」「安全に平和に暮らしたいだけ」。当事者の声は重く、世論を動かす力がある
▼米軍の部品が落下した緑ヶ丘保育園の一部の父母は「メディアの取材にはきちんと答えよう」と話していたという。「事実を多くの人に知ってほしい」との思いからだ。多くの人の協力で、紙面が作られている
▼本来、報道機関がスクラムを組み、立ち向かうべき相手は、米軍や民意を踏みにじった国家権力である。取材相手に寄り添いつつ、記者はその人たちの思いを原動力に記事を書いている。