<金口木舌>一番悪いのは誰?


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 東京五輪では日本全体が盛り上がるのに、基地問題は沖縄だけに押し付ける-。お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の“時事ネタ”の漫才が話題になっている

▼早口で畳み掛ける芸風で、4基も原発がある福井県のおおい町については「夜7時には店が閉まって町は真っ暗。電気はどこへゆく」と問い掛けた。思いやり予算も「アメリカに思いやりを持つ前に、沖縄に思いやりを持て」とばっさり
▼称賛の声が上がる一方、「政治を漫才に持ち込むべきでない」という批判も。いずれにせよこの国は、お笑い芸人が政治を風刺し、それをテレビ局が全国放送したことが話題になるほど閉塞(へいそく)感に包まれている
▼基地、原発、被災地…。「ウーマン」は一部にだけ負担を背負わせる社会のいびつさをあぶり出す。オチは「本当に危機を感じないといけないのは国民の意識の低さ」。笑っていた聴衆を「お前たちのことだ」と指さし舞台を去った
▼科学者の中野信子さんによると、人間の脳は自分で判断を行うことが負担で「信じる方が気持ちいい」ようにできている。確かに何も問題意識を持たない方が、考えなくて済むので楽である
▼だが「もし自分が負担を押し付けられる側だったら」と向き合うことができるのも、人間の力だ。彼らの漫才は視聴者に見たくないものを突き付け、自分事として考えるきっかけをつくった。