<金口木舌>逆境をプラスに


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 団体競技は対戦相手だけでなく、チームメートにもライバルがいて競争がある。プロ野球西武の山川穂高選手(那覇市出身)は今年、その厳しい勝負に勝ち、輝いた一人だ

▼西武には中村剛也選手、メヒア選手と本塁打王を獲得したことのある右の大砲がいる。山川選手も長打が魅力の似たタイプ。実績のある2人は目標であり、試合に出るためには乗り越えなければならない存在だ
▼特にメヒア選手はポジションも同じ一塁。「ここで勝たないと野球人生は終わる」と強い危機感があったという。5月から約2カ月の2軍生活の悩みと苦しみが言葉にこもる
▼厳しい状況にあっても、25歳の若者は気持ちを切らさず、日々の練習を大切にした。1軍復帰直後は代打出場が多かった。しかし打席に立つ機会が少ないこともプラスに変え、打席での集中力が増した
▼過日、県内の少年野球教室に参加した山川選手は「一打席一打席気を抜かず、ほかの選手よりも一球にこだわった」と振り返った。今季は78試合ながら、終盤は4番に座り23本塁打。本塁打はメヒア選手を4本上回った
▼野球教室では子どもたちから憧れの視線を浴びた。中部商業高校時代は全国的には無名だったが、最高峰のプロの世界で今季、才能を開花させた。心構えと日々の努力の積み重ねが苦しい時の成長の力になる。山川選手の軌跡がそう教えてくれる。