<金口木舌>平和だからこそ


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 沖縄戦時の知事の島田叡氏は野球を愛し、俊足、強肩、巧打の三拍子そろった名選手として知られた。25日が生誕の日だった

▼東京帝大で助っ人としてラグビーの試合にも出た。「沖縄の島守」(田村洋三著)によると、京都帝大との試合で頭を強打し、もうろうとしたまま最後までプレー。その後3日間、意識を失った。強靱(きょうじん)な意思をうかがわせる
▼島田氏が摩文仁で消息を絶って約4カ月後の1945年11月初め、東京では戦後初のラグビーが行われた。旧制高校の成城、成蹊、島田氏の後輩の東大の学生らによる混成チームが世田谷・成城学園のグラウンドで戦った
▼終戦から2カ月半。ふぞろいのジャージーで荒々しく、しかしルールに厳格にボールを奪い合う選手たちを大勢の観客が見守った。平和や自由の尊さを思った人もいただろう。全国中等学校蹴球大会の再開はその翌年
▼大会の流れをくむ第97回全国高校ラグビー大会があす開幕する。県代表はコザ。先日、創部50周年式典が開かれた。配られた記念誌は、歴代の主将らが恩師、先輩、他校の同年生への感謝をつづった
▼記念誌タイトルは「継続」。思い通りに転がらない楕円球をつなぐことに歴史や友情、師との関係をつなぐことを重ねた。コザの躍進を期待しつつ、生駒山からの寒風に負けず、花園を駆け回る高校生の姿に、平和をつなぐ大切さを心に刻みたい。