<金口木舌>戌年の願い


この記事を書いた人 琉球新報社

 新たな年を迎えた。今年の干支(えと)は戌(いぬ)。「花咲かじいさん」や「桃太郎」など昔話に多く登場する犬は、古くから人間の身近な存在であり「良き友」だった

▼縄文時代、人間と同じ墓穴や、すぐ近くに手厚く埋葬されていた例が多く見つかっている。国内最古は愛媛県にある約8千年前の遺跡だ。狩猟の手助けが犬の主な役割だったといわれる
▼名護市安和では昨年7月、約2500年前の縄文晩期の地層から、ほぼ全身の骨格を残した2匹の骨が見つかった。自然な状態では他の動物が食べてばらばらになる場合が多く、人が埋葬した可能性が指摘されている
▼犬に関係する習慣や言葉も多い。妊娠5カ月の「戌の日」に腹帯を巻くという風習もある。一度に多くの子を産む犬にあやかり安産を祈願する。成長が早い犬にちなみ、情報技術革新の速さは「ドッグイヤー」とも言われる
▼今年の沖縄は選挙の年である。知事選をはじめ、名護市など17市町村で首長選挙が行われる。米軍統治下の1968年、初の主席公選で屋良朝苗さんが当選して半世紀。県民の選択が問われる
▼米軍関係の事件事故は昨年も相次ぎ「良き隣人」とは言えない状況が続く。安心安全な明るい社会へ。これを後押しし実現する契機に2018年の戌年がなることを切に願う。主人公を勇気づけ、歩みを助けた昔話の犬たちのように。