<金口木舌>心に届く言葉の力


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 わずか31文字が果てしない想像力をかき立てる。そんな短歌の魅力を分かりやすく伝える本が出版された。県出身のモデルで女優の知花くららさんと歌人の永田和宏さんの対談本「あなたと短歌」である

▼知花さんは好きな10首のうち、歌壇界トップの一人、馬場あき子さんの作品を選んだ。「石垣島/万花艶(にほ)ひて/内くらき/やまとごころは/かすかに狂ふ」
▼咲き乱れる花の色とは対照的に、沖縄に感じる罪の意識を詠んだ歌だ。「沖縄出身の私でも、沖縄の問題はとても複雑で扱いが難しい。でも、決してないことにはしてほしくない」と知花さん。この歌がうれしくもあったという
▼上京間もない頃、戦争への思いのギャップから好きな男性と居酒屋で大げんかした。その経験を基に「相手に『何かを伝えたい』と思ったときは、自分の視点も保ちながら相手に届く言葉を探して丁寧に紡いでいくことが大切なんだと学んだ」と記す
▼漫才コンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔さんは那覇市でのライブで「漫才は社会で『空気』のような存在の人に色を付ける役割がある」と語った。辺野古新基地建設に反対する人々にも、お笑いで「色を付けたい」と言う
▼深まる沖縄と本土の溝。それを埋める言葉の力を信じたい。言葉は相手の心に届いてこそ、意識を変える力になる。お互いを“つなぐ表現”がもっと必要だ。