<金口木舌>思い返そうスポーツ本来の魅力

 信じ難い不祥事だ。昨年のカヌースプリント日本選手権で、32歳の男子選手がライバルの25歳の選手の飲み物に禁止薬物を混入させた。薬物を盛られた選手はドーピング検査で陽性となった

▼東京五輪出場権争いが背景にあったという。力をつける後輩へ嫉妬があったのだろう。かつて日本ランキング1位だった加害選手は、世界最高峰の舞台に出場したいと強く思ってきたはずだ。思うような成績が出ず、焦ったのではないか
▼だが、他人をおとしめる行為はもってのほかだ。パドルなどの窃盗も行っていた。日本スポーツ界の世界的評価を落とす前代未聞のスキャンダルだ。被害選手に直筆でわびたことが唯一の救いか
▼2016年7月、世界反ドーピング機関の調査チームがロシアの国ぐるみの不正を指摘した。11~15年の夏季、冬季、パラリンピックを合わせ、不正に関わった選手は千人を超えるとされる
▼アトランタ、シドニーと2度の五輪出場経験を持つ重量挙げの吉本久也さん(東村出身)は「五輪は誰もが憧れる」としつつ、今回のスキャンダルに「名声のためとはいえ、そこまでやるとは」と苦言を呈した。自身の力を認める大切さを指摘する
▼全ての競技者に対する危機として、ドーピングが世界的な問題になって久しい。ドーピングの排除はもとより、スポーツ本来の勝敗を超えた魅力をいま一度思い返そう。