<金口木舌>言葉守り文化守る


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 人形が跳びはね、宙で回転する。名護市を拠点に活動する人形劇団「かじまやぁ」の舞台は、アクロバティックな動きで見る人を魅了する。代表作「チョンダラー」は多くがうちなーぐちだ

▼桑江純子さん(66)が劇団を立ち上げたのは1974年。72年には沖縄が日本に復帰した。変わらぬ基地に憤り、外から押し寄せる文化の波に「沖縄の文化がなくなる」と危機感を感じていた
▼短大で幼児教育を学び、児童劇団の活動に触れた。「子どもたちに沖縄の文化の素晴らしさを伝えていきたい」と、卒業後間もなく劇団を結成した。反対する父親に勘当されたが、決意は変わらなかった
▼東京で見た台湾の人形劇に刺激を受け、その本場に飛び込んだ。世襲制で男性だけの世界だったが、師匠は「あなたは沖縄から来た琉球の人だから。台湾と琉球はきょうだいだ」と受け入れてくれた
▼なぜ外国人の女性が台湾の人形劇を学ぶのかと、現地でよく取材を受けた。決まって答えた。「沖縄は言葉も芝居も失ってしまった。ここには台湾語の素晴らしい人形遣いがまだ残っている。大事にする必要がある」
▼当時、台湾は土着の文化や言葉が抑圧され、中国本土のものが推奨されていたという。昨年末にあった講演で桑江さんは繰り返した。「言葉を失えば、文化も失う」。多くの人が心に留めてほしい訴えだ。