<金口木舌>沖縄女性に力を与える言葉


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 沖縄の歌や踊りが本土で市民権を得ていなかった頃。功成り名を遂げた県出身者が周囲を気にしながら毛布をすっぽりかぶって三線を弾いていたという話がある。差別を恐れたのだ

▼沖縄は逃げても逃げても逃げられない存在-。その自覚を体験した本土の県出身者は少なくない。3月末に退官する県出身の勝方=稲福恵子早稲田大教授は最終講義で、その体験を告白した。関東の沖縄出身女性たちとの出会いと、1995年の米兵による少女乱暴事件が自身を変えたという
▼以来、沖縄に向き合い、問題の本質を追究している。講義では「性暴力は、個人的問題として秘すべきものとされがちだが、実はそんな私的領域に追いやられた問題こそ、政治的問題となる」と述べた
▼勝方さんは女性学や植民地主義批判など世界的潮流をくんだ学問の言葉で沖縄や「私的領域」の問題に光を当てた。その中で、沖縄の伝統的精神を復活させた「うない」運動に注目した
▼「うない」の言葉をまとうことで、沖縄女性を私的領域に閉じ込める力に対抗し、個性を発揮して自らを変える力を付けられる、と説く。それを学問の言葉で裏付け、女性たちに勇気を与えた
▼少女乱暴事件から22年が過ぎても沖縄の現状は変わらない。勝方さんは今後、研究成果をまとめた本を出版するという。言葉を通して沖縄に力を与え続ける決意は変わらない。