<金口木舌>グラミー賞とアメリカの「今」


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 今年のグラミー賞授賞式は、議論に沸きながら「米国の今」を映し出した。アーティストらは白いバラで性暴力への抗議と被害者支援を訴えた。トランプ政権の暴露本を朗読する風刺ビデオにヒラリー・クリントンが登場したのは、さすがに驚いた

▼印象的なのは、キューバ系移民の歌手カミラ・カベロのスピーチ。オーディション番組からデビューした彼女は、現政権が撤廃方針の移民制度(DACA)に触れた
▼子どもの頃に親に連れられて米国へ不法入国した若者の強制送還を免除するこの制度。登録した若者は「ドリーマー」と呼ばれ、就労や通学が認められる
▼「私がこのステージにいるのはドリーマーと同じように、両親がこの国に連れて来てくれたから。希望の他は何も持っていなかった両親は懸命に働き、決して諦めてはいけないと教えてくれた」。ドリーマーのために闘おうと語る20歳の言葉は情熱的だった
▼トランプ大統領は初の一般教書演説で、移民政策で対立する与野党の妥協案に、一定の条件を満たしたドリーマーの市民権を認めること、国境の壁建設などを挙げた。現行の制度は「崩壊」していると述べ、犯罪やテロは全て不法移民のせいだと言っているようにも聞こえた
▼自由や平等を求めて渡った人々が築いてきた国。大統領が「米国第一」と言うこの国はいったい誰のものなのか。議論は続きそうだ。