<金口木舌>沖縄の平和は世界の平和

 「沖縄にまた来れれば、もっと長生きできそうだ」。2001年11月、那覇市の識名園で盛大な歓迎を受けたミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領はこう語った

▼あれから16年余。彼は86歳。執務室の壁の真ん中に、大きな写真を飾っている。カンカラ三線をもらった伝法紀美香さん(当時長嶺小2年)を抱き上げ満面の笑みを浮かべている当時の写真だ。「彼女は今、レディーの年だ」と懐かしんでいるという
▼3度の訪問で沖縄に特別な思いを抱く。その後も来沖を模索したが、体調不良で断念した。「医師が許せば必ず行く」。シベリア出身の亡き妻に「沖縄の海を見せたかった」と涙ぐんだという
▼東西冷戦を終結へ導き、ノーベル平和賞を受賞。米国と交渉し、軍縮も進めた。その功績をたどるドキュメンタリー映画が今秋公開される。監督は巨匠ヴェルナー・ヘルツォーク氏
▼「県民に真実を公開する必要がある」。冷戦時代、米軍の核兵器が沖縄に多数配備されていたことを知り、沖縄へメッセージを送った。核軍縮が揺れる現状の危機感からだ
▼豊かな自然や独特な文化などの潜在的可能性を生かすことで、世界のターミナルになれるという沖縄の将来像も提起した。戦争の前線に置かれ続けている沖縄が平和になることは、アジアや世界の平和につながる。「それを忘れるな」。20世紀の巨人の言葉から、そんな思いを読み取った。