<金口木舌>事故矮小化の疑い?


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 もくもくと黒煙が上がり、炎を上げて燃える家を、消防士が放水し消火に当たる。テレビの映像を見て、既視感を覚えつつ背筋が凍った。佐賀県の住宅地に自衛隊のヘリが墜落した時のニュース映像だ

▼沖国大や東村高江での米軍ヘリの事故を思い出した。既視感はその映像だけでなかった。小野寺五典防衛相が、発生後の会見で「ヘリAH64の着陸、炎上が確認されました」と発言した
▼自衛隊ヘリが住宅地に墜落しているのは映像から明らかなのにもかかわらず、「着陸炎上」と表現。さらに「住宅等に落着しているような状況」と説明した。「一件落着」の落着しか思い浮かばず、意味不明の説明だった
▼名護市安部にオスプレイが墜落した時、米軍や日本政府は「不時着」「着水」と言い換えた。事態を矮小(わいしょう)化しようという意図が感じられた。今回もそうなのか。それから1時間後、再び行われた会見で小野寺防衛相は「墜落」と表現を改めた
▼墜落と改めた背景は分からない。発生当初は情報が錯綜(さくそう)し、「着陸炎上」となったのかもしれない。発言の揚げ足を取るつもりはないが、前例があるだけに疑いが膨らんだ
▼安倍晋三首相は全ての自衛隊機の点検を指示し、同型機の飛行停止を命じた。国内法に基づき捜査可能な自衛隊。一方、米軍機事故は十分な現場検証さえ日本側はできない。二重基準が県民をさらに苦しめている。