<金口木舌>世界の中心で島おこし


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 「おっとう、おっかあ。 楽しかったよ。ありがとう」。民泊した中高生たちが贈った色紙には、感謝の言葉があふれていた。笑顔が並ぶ多くの写真と一緒に、家中に所狭しと飾ってある

▼9日、琉球新報活動賞を受けた山城克己さん(59)は「伊江島のお父さん」として、生徒たちから慕われている。修学旅行の民泊を2003年に島に導入、その取り組みは全国の先駆けとなった。今では年間約5万人が民泊で島を訪れる
▼「本当にいろいろあったよ」と山城さん。まず受け入れ民家を探すのに苦労した。最初に受け入れた学校の生徒の中には、夜中に出歩いたり、取っ組み合いのけんかをしたりする子もいた
▼「自分の子として預かってくれ」とお願いしていたので、非行がないよう朝まで見張った住民もいた。生徒たちを送り出した後、民泊を頼んだ多くの家から「何を考えているんだ」と叱られた
▼当時、荒れていた学校だった。だが、地元に戻った生徒たちは、目を輝かせて島の体験を語ったという。「子どもたちが変わり始めた」。教師たちが再び訪ね、ぜひ民泊を続けさせてほしいと要望した
▼生徒たちとの交流は、高齢者の多い住民の生きがいづくりにもつながっている。外国人の民泊も少なくない。伊江島で地域おこしに取り組む山城さんの言葉が力強い。「日本の端にあっても世界の中心になれる」