<金口木舌>「ほのあかり」の優しさ


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 照明デザイナーの石井幹子さんは、都会の人の目は光の洪水にさらされて鈍感になっていると指摘する。職場の推奨照度が750ルクス程度のところ、ビル内オフィスで1500ルクスを超すところもあるそうだ

▼石井さんは生活には30~50ルクスあれば十分として、光と闇の中間域「ほのあかり」でのくつろぎを提唱する。グラデーションが強調され、視覚はもちろん、聴覚や味覚までもが敏感になるそうだ
▼読谷村で「よみたん夜あかり」プロジェクトが開催中だ。12月初めから2月末までの86日間、宿泊施設や村商工会の会員店舗にイルミネーションやちょうちんが付けられ、柔らかな光で彩る
▼プロジェクトは陰影の趣と夜の読谷、冬の読谷の魅力を発見してもらうのが狙い。その一環のランタンオブジェコンテストには52作品が集まった。作り手の願いがこもった作品はむら咲むらでともされている
▼石井さんは沖縄海洋博覧会の照明も手掛けた。石油ショックの影響で、予算を削らざるを得ず、会場照明は質素になった。そこで際立ったのは自然の光の素晴らしさだった
▼著書で伊江島の向こうに落ちる夕日と会場を照らす月光について特筆している。満月の夜は0・1ルクス。私たちは暗がりの良さを感じられるだろうか。感覚的ではあっても、場面ごとの必要十分な照度を知っているということこそ、本当の豊かさなのだろう。