<金口木舌>選択肢の多さで悩む


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 ランドセルの色は、かつては赤か黒だった。女の子は赤で、男の子は黒。そこに選択の余地はなかった。今や水色、紫、ピンク、茶色とカラフルになり選択の幅は増えた

▼選択肢がなかった時代に比べ、今の子どもたちや親は多様な選択肢の中から一つを選ぶ。このため、新たに「悩む」羽目にもなっている。選択肢の増加やネット上に情報があふれる中、「悩む」「選択」「決断」は日々どこかで誰もが直面している
▼一方で「別の選択をしていれば良かった」という後悔や「あれだけ悩んで決めたのに、この程度か」と残念に感じたことは誰しもあろう。心理学者のバリー・シュワルツ氏は「選択肢の多さは幸福度を下げる」と指摘する
▼選択の余地がなければ、期待値はそれほど高くない。だが、選択肢の多さが期待値を上げてしまうこともある。人間とは何とも身勝手である
▼しかしこれが医療の現場で、複数の選択肢から治療法を決断するとなると難しい。今や主治医以外の医者にもセカンドオピニオンを患者側が求め、自己責任で決断しなければならない
▼米アップル社のスティーブ・ジョブズ氏は生前、毎日同じ服を着ていた。理由は服を選ぶ決断を減らすため。トップに立つ人は日々大きな決断を迫られる。「決断疲れ」を防ぐ狙いが服にあった。「決断をしない思考停止」の時間は、私たちにも必要かもしれない。