<金口木舌>本物が認める本物


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 鳴り響く指笛の合間に「ウチクルセー」と、うちなー口が飛ぶ。2月4日、県立武道館でのボクシング世界戦。「相手を痛めつけろ」との少々激しい言葉だが「これぞ沖縄」と苦笑いでいられる雰囲気が会場にあった

▼応援団の視線の先には、リングに向かうWBCフライ級王者の比嘉大吾選手がいた。その前を具志堅用高会長が勝利へと導くように歩く。二人三脚で世界で戦う姿をライトが照らした
▼この師弟への県民栄誉賞贈呈が決まった。具志堅会長は県勢初の世界チャンプで、13戦連続防衛は今も破られない日本記録だ。恩師・金城眞吉さんの「本土に負けるな」の言葉を勇気に変え、戦い続けた
▼申し分のない功績の具志堅会長に比べ、比嘉選手は地元での凱旋試合を勝利し、日本記録の15戦連続KOに並んだものの、防衛はまだ2回。賞が重荷にならないか、ファンとして不安もよぎった
▼だが比嘉選手の類いまれな強さが不安を打ち消す。連続KO記録上位の日本選手で、世界戦でのKOを含むのは比嘉選手だけ。15KO中11回が4回までに相手を沈めた。勝利の中身の濃さは抜きん出ている
▼同じ日本記録を持つ浜田剛史さんも「本物のファイターが出てきた」と、頼もしい後輩の誕生を喜ぶ。「本物が認める本物」は、特別な王者へと一歩ずつ階段を上る。県民栄誉賞を一層輝かせる成長へ、ファンの期待は高まる。