世界各地の紛争地や東日本大震災の被災地を取材するフォトジャーナリスト豊田直巳さんから3冊の本が届いた。「写真絵本」という体裁の本の主人公は、原発事故の放射線被害に苦しむ福島県飯舘村の人たちだ
▼家や畑、家畜の牛を失った村人の物語が写真と共に描かれている。3冊を貫くのは、豊かだったふるさとを失った村人の苦悩、それでもふるさとを愛し、懸命に生きる村人の希望である
▼大震災から7年を迎える。あっという間だったと感じる人、まだ7年かと嘆息を漏らす人、それぞれだろう。復興の歩みは長く、険しい。原発事故によって帰還困難区域となった地は今も時が止まったままだ。そのことを忘れまい
▼沖縄で暮らす被災者の7年もさまざまだろう。気候や食生活には慣れただろうか。県民の中に友人ができただろうか。帰りたくても帰れないふるさとを心の中で温める日々を送ってきた被災者に優しい沖縄でありたい
▼国の政治は被災者にどう向き合っただろうか。仮設住宅で暮らす中、人生を終えた人は岩手、宮城、福島の3県で1600人を数える。被災後の生活再建がかなわなかった人たちだ。真の被災者支援とは何かが問われている
▼「写真絵本」を見直してみる。村人たちの笑顔に心が和む。苦境の地から笑顔の輪を大きく広げたい。そのために私たちができることがあるはずだ。