<金口木舌>奮闘の積み重ね


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 国際大会で銀メダリストにもなったソフトテニスの神谷絵梨奈さん(27)=八重瀬町出身=が実業団の名門ヨネックスを辞めた。常勝校の東京女子体育大で日本一を経験し、日本代表としても活躍。第一線でのプレーに区切りを付けた

▼主将として今季もチームをリーグ優勝に導いた。実力者に「引退」を決断させたのは、一定の達成感に加え、子どもたちに自身の経験を伝えたい、との思いだった
▼ソフトテニスはアジアを中心に広がる。ボールは軟らかくスピードがあまり出ないため、年齢を重ねてもプレーを楽しめる。本来は息の長いスポーツだ。しかし実際は「高校や大学進学時に選手が減る」と神谷さん
▼2020年の東京開催を含め、五輪競技に採用されたことはない。先が描きにくいこともあり、硬式テニスへの転向のほか、進学、進級時などに競技を離れるケースが多いという
▼ソフトテニスは速さでの得点が難しい。先の動きを読み返球する一打に細かな神経と技術が必要だ。相手との駆け引きが醍醐味で、神谷さんは全国各地で子どもたちへの指導教室を繰り返し、魅力を伝えてきた
▼神谷さんが見据える先には技術力向上だけでなく、将来への目標を抱かせ、競技継続へとつなげる狙いがある。地味だと思われる競技でも、アスリートや指導者の奮闘がある。その積み重ねが未来を切り開く一歩となる。